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高橋知也監督『セーラームーンCosmos 前編』
2023 / 06 / 10 ( Sat )
かつてのテレビアニメ版『セーラームーン』の本編は一度も担当してないのですが、『セーラームーンS』のOPとそのED「タキシード・ミラージュ」だけ演出しました。去年、旧知の東映アニメーションのプロデューサーから連絡がありまして。制作中のセーラームーンの新作劇場版で『セーラームーンS』のOPをオマージュしたOPにしたいと、監督からの要望があるのですが、とのことで、ああそんなことでしたらどんどん使ってくださいと了承してました。公開前にはムビチケも頂いたので早速初日に鑑賞。

内容的にはテレビシリーズで言えば『セーラースターズ』で、と言ってもその頃はやたら忙しく当時は週休二日ではなかったのもあってあまり見てなかったものでこんなお話だったのか、と新鮮。結構過酷な展開で後編が気になりますね。OPも『S』の要素に今作のキャラクターをいれこんで、本編にもTVシリーズへのリスペクトがたくさん入っていたようで、高橋監督ありがとうございました。

滅多ない機会なので『S』のOPについて少し解説めいたことを。
作画は長谷川眞也さん。あまり期間なかったと思うんですが一人で原画やり切ってました。
初期バージョンからウラヌス、ネプチューンが増えたとき、敵キャラのカットがほたる、プルートーに変えたときと二回変化してます。後半の変化は最初から織り込み済み、初期バージョンはウラヌス、ネプチューンありで構想しておいてなしでもなんとかなるような調整を。
技術的には当時はフィルム撮影なので通常の本編ではできないオプチカル合成というのを三箇所で使ってます。最初の円柱に立つ一同のPANUP、手前に舞い散る花びらなどで撮影が大変なので、と撮影さんからの申し入れで合成に。宙を飛ぶ一同からじわ、とタイトルロゴが浮かび上がってくるところ。ロゴの形のマスクの中と外で画像全体のTBフレームを変えて差が大きくなるようにしてます。ラストカット、次々にキャラクターがインしてくるところ。これはたしか劇場版聖闘士星矢で山内さんがやってたことの応用系でやってた気がします。
宙を舞うムーンの奥でマーズたちが次々に技を繰り出すカット、ウラヌス、ネプチューンが加わってもカット全体の尺、秒数は変わってません。単純にマーズたちを短くしたわけではなくて、技を出し終わるくらいのタイミングで次のキャラクターが手前に重なるようにinしてくることで後で加わる二人分の時間を生み出してます。これは最近『デジモンゴーストゲーム』OPでも進化後のデジモンが次々に技を出すパートでも使ってました。
さらにムーンの奥のマーズたちは影色が通常色でないだけでなく、アウトライン、いわゆるトレス線が黒でない色を使ってます。通常のセルに動画を転写するにはセルと動画用紙の間に黒いカーボン紙を挟んで熱で転写するので、特殊な部分をハンドトレスする以外はたいてい黒線。たまに茶色が使われることもあったようですが。『トランスフォーマー』や『GIジョー』最近公開してた映画『ダンジョンズアンドドラゴンズ』などの海外作品のテレビアニメ版を東映動画(当時)が請け負ってたことが結構あって、そのある作品で赤、青、緑、オレンジ、黄色のカーボン紙が使われてまだ在庫があったので、このOPのカットくらいなら使えそうということでキャラごとに違うトレス線の色となってます。ムーンだけは黒なので、重なっても色がぶつかることなくどちらのキャラもちゃんと見えるように。
とまあ、オプチカル合成にしろ色カーボンにしろデジタル彩色、撮影の現在ならそんなに手間でない技術となってますが、CG以前の技術でも色々工夫してましたということで。
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